社員の気持ち、社長の気持ち。

残念なことに私が10年程、利用を続けていた自宅の近所にあるフィットネスジムが閉館されることになった。
コロナ禍での業績不振が原因のようだ。このジムは全国的に展開をしている大手企業であり、この度、全国で複数の施設が閉館される。その中の一つが私の自宅近所にあるジム。
今年のお正月明け、一枚のハガキが届いた。そのハガキはジムの閉館案内だった。このような話はジムのコーチからもスタッフからもまったく聞いておらず、2月末に閉館されるといういきなりの知らせは寝耳に水で驚いた。
自宅近所で私には便利なジムだったので、コーチやスタッフも親しい人がいて寂しく感じた。
そして、その知らせを受けてから初めてジムへ行った。コーチやスタッフの様子を気にしながら。一人のスタッフの方と話したのだが、今回の閉館はスタッフも聞いておらず、年末にいきなり知らされたようだ。
そして、このようなやり方に怒っていた。「2ケ月後に閉館って、いきなりすぎるでしょ!」、「お客様も困っている」、「お客様からは知っていたんでしょ、と言われるけど、私たちも本当に知らされていなかった。」などと悔しさや怒りが伝わってきた。このようなやり方に社長への不満や怒りも言っていた。
そんな勢いだったから、私はほとんど何も言えなかった。
このジムはグループ事業展開をしており、上場企業でもあるので、業績を確認してみた。そうすると、ジム事業は数年前から減収減益のような状況。それを他の事業の利益でカバーしている。そして、昨年起きたコロナによる影響で、会員が減り、2020年3月期では利益がゼロとなっていた。前年比90%以上の減収である。
日本でコロナがひろがったのは2月下旬以降だったことを考えると、コロナによる影響は大きかっただろうが、決してそれだけでもないように思う。
さらに、コロナはその後もおさまらず今はまた感染者数が増えている。非常事態宣言も出された。今期は赤字になっていると思われる。
そういうなかで、この施設の閉館が決まった。コロナによる影響はあるが、それ以前から業績は落ちていて、そこで必要な対策がとれていなかった。それまでの課題がコロナで一気に吹き出したということだ。
しかも、この施設は赤字幅が突出していたそうだ。その理由は、施設の家賃負担の額が大きいこと。970万円/月の家賃と聞く。一年で1億円以上である。
この建物は私が見ても無意味に豪華なのだ。立派な建物である。案の定、この建物はバブル期に建てられている。バブルの匂いがする建物である。開館当初は高級ジムとして運営がされていたようで、高級車に乗った利用者が集まっていたようである。
その運営会社がバブル崩壊とともに立ち行かなくなり、その後に、この会社が運営を始めた。10年前までは十分に利益がでていたようだが、ここ数年は赤字続きだったようである。
そういう背景があり、コロナをきっかけにして閉館が決まってしまった。
フィットネス事業を取り巻く環境は時流変化とともに厳しくなっている。特に、設備投資をかけた施設型のジムが厳しい。一方で、女性にターゲットを絞り設備投資を押さえたカーブスなどは好調に伸びている。しかも、最近ではプライベートジムも増えている。いづれも設備投資を押さえた運営で収益を上げるビジネスモデルだ。
しかし、それでもスタッフの声を聞いていて、これまでにできることはなかったのかということ。閉館はコロナがきっかけとなっているが、その前から業績が厳しくなっていた。
スタッフやコーチにその施設の売上高や収益状況を聞いても、ハッキリと答えられない。おそらく状況の共有はできていなかったのだと思う。そして、スタッフやコーチは施設の状況が厳しいというのは耳にしていたかと思うが、閉館の可能性もあることを感じていたかと言うと、どうもそのようには見られない。
もし、私が社長だったら、どうするか?
やはりこういうことを考えてしまうのだが、まずは情報共有が必要だろう。月次でその施設の利益が見えるようにする。また、そのジムにはフィットネスの他に、スタジオ、ゴルフ、テニス、サッカーと各種運営をしているので、それぞれの収益も見えるようにする。
そのうえで、対策ミーテイングを行う。改善のアイデアを出して、実行に移す。と同時にスタッフやコーチの一体化が進められる取り組みを始める。そして、ジムの存在意義を固める。何のために我々はここでジムを運営しているのか?
スタッフが口にする社長への不平や怒りを聞いていて、社長をはじめ経営陣とスタッフにはつながりがないと感じた。一体感もない。
ジム事業がおかれた環境の厳しさは確かにあるが、問題の本質は企業としてのこういう部分にあるのではないかと感じた。

