新築注文住宅業界で起きる乖離リスク。

注文住宅業界において、以前であればお客様との契約金額が上がっていくことは喜ばしい事だった。それによって、1棟あたりの粗利額も上がるからだ。そのために、いかにして販売価格を上げるかという値上げアップのノウハウも生まれた。
ところが今はそのようなノウハウを使うこともなく、販売価格が上がっている住宅会社が増えている。通常、販売価格を上げるためには、より大きな家の提案や仕様や設備をグレードアップするのだが、そのようなことはしていない。むしろ以前からの傾向ではあるが、提案する家の大きさは小さくなる一方。
お家の延床面積は小さくなりながらも、価格は上がっているという現象が起きている。その原因は、資材価格の上昇である。それは、まだこの先も当分続く。それもコロナが原因となっているのだが、コロナがあけた後、以前のように戻るのか、それともインフレが起き上がったままになるのか?
さて、お家の価格がこのように上がっているのだが、購入する人が以前と変わらずいれば問題はない。昔の日本の高度成長期の頃のように物価が上昇を続けても、国民の所得も増え続けていたのでモノはどんどん売れた。ところが今は違う。所得が増えるどころか、現状維持か下がっている。
手元に、ある県の年齢別・所得別のデータがある。そこは他の県と何か大きな違いがあるような所ではない。一般的な地方の県である。そのデータによると、例えば30代で所得が400万円~599万円の割合は2%しかない。一方で、200万円~399万円は8.8%である。20代も見てみると400万円~599万円は0.6%、200~399万円は6.9%である。
今の若い人は年収400万円を目指すという人が増えていると言われるが、確かにデータを見ると明らかに年収300万円台が多いのが分かる。それも少しだけ多いというのではなく、3倍も4倍も多くなっている。
一方で、新築戸建てを建てるにはどれぐらいの所得が必要なのか。土地と建物をあわせて2500万円くらいまでであれば、頭金0円でも所得300万円台で手に入る。しかし、これが3000万円を超えてくると厳しい。今は夫婦共働きが増えているというが、地方の実態は妻は非正規やパートとなっているのがほとんど。東京では夫婦とも正社員で高収入を得るパワーカップルがいると言われるが、地方では限られる。公務員夫婦ぐらいではないだろうか。
そうなると共働きによる合算で所得が計算されるとは言え、やはり収入の柱となる旦那の年収が低いのは厳しい。
つまり、今の新築注文戸建て業界では顧客層の所得は増えないか下がる中で、家の価格は上昇をするという状況が起きている。スタグフレーションである。これがいつまで続くのか?その見通しがハッキリしない。販売価格の上昇にお客様はどこまで追っついて来られるのか?
以前から地方では住宅購入層のボリュームゾーンは年収300万円台となっていた。低所得者向けの住宅を開発していない会社は、本気で考えなければこれからの展望が描けない。あるいは、戸建てリノベーション事業など客層を変える展開をしなければエリアをひろげない限り縮小するしかないだろう。

