プロフェッショナルな診察。(チェック済)

母は5年ほど前に足の指を手術している。それが数ケ月ほど前から以前に手術したところに痛みを感じるようになっていた。私は今、実家から離れて暮らしているため、その様子を本人や父親、弟、また弟の奥さんから聞いていた。
以前に手術をした先生にも相談をしたようだったが、そのときは以前に手術したところは問題なく、治っている。なので、また痛みが出ているのであれば、新たに手術が必要だと言われたようだった。
母としてはできるだけ手術は避けたい。しかし、地元で信頼できる先生や病院を見つけられないでいた。そうしているうちにも足の痛みはひどくなり、とうとう歩けなくなってきた。
また、母親は耳も遠くなってきている。そのためにこちら側が話していることを十分に聞けていないように感じることもあり、そのためか話すことも遅くなっている。以前と比べるとコミュニケーションがとりづらくなっている。
正直、どうすれば良いのかと私も悩んでいた。このままではいけないし、以前に手術と入院でお世話になった病院にも行けないし、地元でも良い評判の病院はないしという状況。
何もしないわけにはいかないので、地元からは少し遠くなるが評判が良いと聞く病院へ連れて行った。朝から患者さんが並ぶ繁盛院だった。
そして、診察が始まる。私は付き添いとして母は耳も遠く、十分に話せないだろうからと思っていたので、先生の話を聞き、必要なことは私が話そうと思っていた。
しかし、いざ診察が始まると母は先生の話は聞こえているし、話すことも大きな声でしっかりしている。その様子を見ていて、普段とは違う母の様子に驚いた。先生も私と話そうとはしない。私が少し話しかけても、こちらを見ない。母をじっと見ている。
そして、母に顔を近づけて、目を見ながら話しているのが分かる。十分に必要なコミュニケーションはとれていた。
足のレントゲンを撮って診察をしたときは、以前に手術したところは問題なく治っている。今、痛みがでているのは手術したところとは別の場所。それをハッキリと説明してくれた。母も頷いている。そして、どうすれば治りますかと聞くと、先生はハッキリと手術するしかないと言う。
母は手術は嫌がっていたので、何と言うかと気になっていたが、「他に方法はないですか?」と母は先生に聞くが、そのときも「治すのであれば手術しかない。」と言われる。
そこで、母は手術することを受け入れた。それを私は驚きながら聞いていた。次は手術をする病院をどこにするかである。その病院では手術はできないために、他の病院の紹介状を書いてくれることになったのだが。
地元の病院か、以前に手術をした病院か。以前に手術をした病院は嫌がっていたので、私は地元の病院の方が良いのではないかと母に話しかけた。
そのとき、驚いたことに母は以前に手術した病院が良いと言う。そして、先生もその方が良いのではないかと言う。但し、そのときも私が気にかけている様子が伝わっていたようで、何度か同じ病院で、同じ先生で良いですねと念押しをしていただく。
そして、紹介状を書いていただき、予約も取っていただいた。
診察をするまではどうなるかと気をもんでいたことが、帰るときには治療の方向性も固まり、母も安心した様子になっている。
私はプロの診察を観た気がした。多くの患者さんが来るのも分かった。
治療の技術が素晴らしいのかもしれない。それは経験をしていないので分からないのだが、おそらくそこではない。治療技術であれば他にも優れた先生や病院があるかと思う。
この先生は診察のプロだと思った。患者さんとのコミュニケーションが他の先生とは違うのだと思った。
患者と正面からしっかり向き合う。顔を近づけてしっかりと目を見て話す。あくまでも本人と話そうとする。また、患者の話もしっかりと聞く。私は付き添いとして話しかけたこともあったが、私のことはほとんど見ない。あくまでも見るのは患者さんだ。
それによって、母が我々と一緒にいるときの様子とは違った。先生の話を聞き取り、しっかりと自分の考えや意見を話していた。すでにこのときに母を変えていた。
話の聞き方と話し方。そして、誰と向き合って話すべきなのか?
たった数分の診察だったが、それで母は変わった。プロフェッショナルな仕事だった。

